総合学術データベース
池上・総合学術データベース:時評欄(30);「これからの学習社会」2020年2月3日
これからの学習社会=働きつつ学ぶシステムと通信制・対面教育
-被災地での新たな活動をめぐって-
佐藤霊峰から学ぶもの-ふるさと創生大学・昔は夜学生・今は通信制教育システム
岩手県気仙郡住田町の詩人、佐藤霊峰は、夜学生についての詩を残した。
「我は夜学生なり
昼働きて夜をし学ぶ
かつての日世の人之をさげすみて
夜間学生なりと
我は夜学生なり
その学費親に頼らず
学力彼に及ばざるといえど
道を求めんの気がひ
我彼に劣らず
我は夜学生なり
遊びたきを遊ばず眠たきを寝ず
世のインフレの中にあがきつつ
奢りたきを節してそを之にふりむく
我は夜学生なり
その欲しき本の数多くあるを
その収支のつぐなわんを計りて
必要と認むる物のみを購う
我は夜学生なり
その得んとするは
単なる履歴にあらず知識にあらず
真実なる自己の力の探求にあり(以下、略)
この詩は、現代の通信制教育システムで、これから学ぶ者にとっても、基本的な道標となるであろう。
ここには「働きつつ学ぶもの」が直面する困難と、それにもかかわらず、困難を希望に転換しうる「人間らしさ」「気がい」「ライフ・スタイル」「合理的な家計経営」「真実なる自己の探求」などが見事に謡い込まれて(うたいこまれて)いる。
そして、霊峰の時代には、例外の学生であるとみなされていたものが、これからの、生涯学習時代においては、すべての市民が、働きつつ、生涯にわたって学習を続け、真実の自分を発見する営みが始まっている。この営みは、世代を超え、時代を超えて継承・発展してゆくであろう。(Ikegami, Jun ©2020)