文化政策・まちづくり大学

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「生徒たちが卓越した倫理を身につける」には -「子どもの誇りに灯をともす-誰もが探求して学びあう職人文化をつくる-」

Ⅰ はじめに-卓越した倫理を身につけた生徒たち

-「子どもの誇りに灯をともす-誰もが探求して学びあう職人文化をつくる-」

 

読み継がれる教師のバイブル

 本書は、大多数の類書が何らかの学術専門の各位によって執筆されているのに対して、ながらく、教師として、活動されていた方の、経験をもとにした著作であった。

畏友、荒木一彰氏、ご所有の一冊であったものをお借りしたのである。

「子ともたちに、大工仕事など、職人の技をひろめつつ、執筆されたようです。良い本ですから、よんでみますか?」と、薦められて、手に取った。

まず、翻訳でありながら、書名そのもの、子どもの誇りに灯をともす、というのが、が抜群の魅力を持っていた。

そこには、『子どもの誇りに灯をともす-誰もが探求して学びあう職人文化をつくる-』という、著者の思いが込められていた。

帯には、「読み継がれる教師のバイブル」とある。

さらに、全米屈指のPBL*校「ハイ・テック・ハイに影響を与えた教育思想」というのも、斬新な試みという「期待感」を持たせた。PBL校というのは、project based learning, 課題解決型学習を意味する。

ハワ-ド・ガ-ドナ-(ハーバート大学教育大学院教授)推薦!とあったのも、この人物がハーバートで講義しているさまを創造させた。日本社会では、「山・里・海連関学」の講義を現場の方に依頼されたという京都大学の例はあるが、ハーバートも、「現場」」を重んじているらしい。

 

帯の続き、を見よう。

「プロジェクト型学習と芸術教育の融合が変革を生み出す

「提出して終わり」じゃなくて、

何度もやり直して「美しい作品」をつくり上げる

生徒が、先生が、地域に人たちが

ワクワクする学校が生まれる!

英治出版 2023年 とある。

 

クラフトマン(職人)=誠実さと知識を兼ね備え、

自分の仕事に誇りをもって一心に取り組む人。

 

「教育のあるべき姿を思い出させる情熱に満ちた一冊」ハワ-ド・ガ-ドナ-(ハ-バ-ト大学教育大学院教授)

定価 2,200円(10%税込)

 

*ここで、PBL校とあるのは、project based learning, 課題解決型学習のこと。

 

職人と作品づくり

 この書における、著作者は、ロン・バ-ガ-(Ron Berger)、御翻訳は、塚越悦子先生、ご解説は、藤原さと先生であった。

原書のタイトルは、“An Ethic of Excellence, Building a Culture of Craftsmanship with Students” by Ron Berger, Heinemann, a division of Greenwood Publishing Group, LLC, 2003.

直訳すれば、『エクセレンスの倫理-生徒とともに職人文化を構築する-』という意味か。著者は、エクセレンスと倫理の関係について、次のように述べられていた。

「エクセレンスの鍵は、文化にあります。家庭や地域コミュニティや学校に、質の高い作品を生み出すことを期待し、支援を惜しまない文化があると、子どもたちはその文化に適応しようとするのです。エクセレンスの文化は人種・階級・地理といった垣根を超えていきます。・・・一度、大きな影響力を持つ倫理観が根付いた文化に触れれば、その倫理観が彼らの基準になります。それが彼らの当たり前となるのです。」(同上、20ページ)

 

本文によると、この書の冒頭には、「日本の読者のみなさんへ」と題して、2022年6月、ロン・バ-ガ-による、メッセ-ジが、翻訳されていた。そこには、一般の教師と同じように、「生徒に試験でよい点を取れるように教えなければ」という強いプレッシャ-に耐えながら、50年近く教師として働きつつ、同時に、「人は生きていく上で、試験の点数によってではなく、どんな人であるかという人間性や、課題に取り組む姿勢(倫理観)や、つくり上げる作品の質において評価される」ことに注目されてきた。

本書の執筆は、今から、20年前だが、今も変わらず、「生徒は美しい作品を作り上げることができる」という信条をお持ちである。そして、それを成し遂げた人々は、「思いやり」を持って、市民として成長し、・・・世界を変えるような美しい実践を達成します。この意欲と自信が・・・その後の人生におけるキャリアやビジネスで大きな力量として開花するでしょう。と、述べている。

そして、困難を覚悟しながら、日本の教師が、日本職人文化への、熱い期待を持ち続けるよう助言していただいている。ありがたいことであった。

(2024年6月10日復活第2号、© 池上惇)

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