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池上・総合学術データベース:時評欄(88)ホ-ムペ-ジ用;池上惇「環境規制の倫理と法 は、何を生み出したのか」
はじめに 環境規制の倫理と法は、何を生み出したのか
‐『宮本経済学の再評価と継承』の出版を契機として-
碇山洋・武田公子・佐無田光・土井妙子編著『宮本経済学の再評価と継承』(金沢大学人 間社会研究草書)丸善出版、2022 年(総ペ-ジ数 244+はしがき・執筆者一覧)が、公刊された。
この書は、宮本先生ご自身も寄稿されている。
今日は、この書の宮本先生ご自身の、創造的な、ご研究を、先生ご自身のご寄稿を手掛かりとして、ご紹介しておくこと。ここに、重点を置く。
それによって、日本の財政学や経済学が、世界の学術研究にとって、どのような貢献をしてきたのか、が、解明し得るからである。
この書自体は、多くの部分が、次世代の研究を担う、研究者群によって執筆されており、 これら、後継者が、どのようにして、先覚のご研究を継承し得たのか。
これを考えたいという読者も多いと思う。
しかし、今回は、各章の概要をご紹介するのが、精いっぱいの仕事であったので、各章の詳しいご紹介は、別の機会に譲ることとした。
先覚としての宮本憲一先生
宮本先生は、すでに、90歳を超えられていて、昨年、漸く、88歳を迎えた私には、常 に、仰ぎ見る存在であった。
とりわけ、宮本先生は、当時の公害問題を解明された、経済理論として見れば、ノーベル 経済学賞を日本にもたらし得た、貴重な貢献をされていた。
その内容は、今日の本論でご紹介する。
さらに、先生のご学術的な貢献は、日本における市民活動を「公害防止のための法制度」 にまで、高められて、現実に、法制度を弁護士からの支援を得ながら、戦後の憲法を、仕事 や生活の中に生かされて、現実に、日本市民の生命・健康を守ろうと、一貫して、努力され たことであった。
先生のご努力は、多くの日本市民が共感し、理解するところとなる。
日本社会における法制度の整備状況については、一定の不十分さを認めざるを得ないが、 日本社会において、自分自身の健康にかかわる基本問題として、多くの市民が合意し得たことは、事実である。
先覚から学んだもの
わたくしども、後進の者たちが、宮本先生から、学んだものは、学術的なご貢献ばかりでなく、「法を創り出して社会を変える」道筋を知りえたことである。
その意味では、公害に反対する市民活動は、「公害規制の法を生み出して」、市民の生命 や健康を現実に守ることができたのであった。
汚染された水や大気から、清浄な水や大気を得たときの、さわやかな気持ちは、今でも、 忘れることはできない。
このような、新たな社会環境・自然環境を生み出す力量は、実は、われわれ、市民自身に あったのだ。これは、今後の、人生を歩む、多くの人々にとって、素晴らしい体験であった。
世界の動向
いま、世界は、ウクライナ危機という深刻な問題を抱えながらも、脱炭素・環境問題にお いては、無意味な抗争を、即時、停止して、一致した行動をとるよう、強く、求めている。
世界人権宣言をはじめとする国際的なルールづくりは、世界各国市民の仕事や生活にひろく行き渡る勢いを示し始めた。
日本社会における公害問題は、人権や民主主義を尊重する新興諸国にとって、「法による 公害の制御」に関する貴重な経験として、各国の市民活動を励ましている。
これは、わたくしども、日本市民の誇りである。
日本社会は、原爆という前代未聞の大被害を体験し、さらに、地震による原子力発電シス テムについても、大被害を体験した。多くの被害者の声は、次世代にも継承され、核軍縮に おける世界の動向を先導してきた。
公害・環境問題における日本社会や市民活動の経験も、生命や健康の危機という点では、 共通したものを持ち続けている。
今後、日本社会における復興や再生の経験が世界にひろがり、世界市民、お一人お一人の なかに、受けとめられてゆくこと。
このような状況こそ、世界の平和を実現する、第一歩なのであろうか。
(©Ikegami,Jun.2023) 3 池