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総合学術デ-タベ-ス:個人別研究内容(17)岸本直美 先生;「食文化研究から見た、各地における日本固有の伝統と革新」内容紹介;池上惇
食文化の質を高め、裾野を広げるには
岸本直美先生の研究領域は非常に広く、深い。
例えば、
- 栄養学
- 食文化
- 書道(師範)
- 煎茶道(正師範)
- 華道(教授)
などなど、日本人の文化と教養の基本を身につけられ、京都の伝統文化を、食文化中心に、研究教育されてきた。
わたくしも、たびたび、先生のご紹介で、京都の近郊農業、京あめの製造販売の現場、など、多くの場から学ばせていただき、食文化に関する職人の技や思想に触れさせていただいた。
そこで、学んだことは、京都の職人は、伝統の技や文化を継承しながら、同時に、現代のライフスタイルの変化にも、積極的に応答しており、デザイン・包装、質の向上などに向き合っていることであった。そうであればこそ、最上の質を求める「トップ・クオリティ顧客」に愛され、かれらの要望を上回るような開発力を基礎に、事業が継続しているのではないだろうか。
これは、西陣織物の現場でも感じたことである。
そして、かれらは新たなライフスタイルの提起者であることも多く、いま、「消費の二極化=低所得層と高級志向層とへの消費者の分裂」の中においても、低所得層へも配慮しながら、両者をつなごうと努力されているようだ。「質がよくて大衆向けでもある財」への目配りがあるかどうか。いわば、「差をつける」のではなく、両者が近づき、共生する場を生み出す努力こそ、大きな意味を持っているのであろう。
京の町衆という言葉があるが、全国に広がる、二極化に抗して、共通の場を広げようとする努力。これが町衆を基盤とする「京都経営」の魅力なのかもしない。
岸本先生は、一方で、極上の質を実現されながら、他方では、町衆に受容されるものを同時に追求される。この姿勢から学ぶことが多かった。
(©Ikegami, Jun 2020)