文化政策・まちづくり大学

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総合学術デ-タベ-ス:個人別研究内容(8)近藤太一 先生;観光学・論文作成支援のための講義;事例;江戸時代研究と奈良における忍性研究:内容紹介;池上惇

近藤太一先生 ご研究内容解説     池上惇      2020年8月18日

近藤先生の、ご業績は、1990年代の初めごろに、遡っている。もう、30年近くになるであろう。

わたくしたち、文化経済学に関心を持つ、研究者が、アメリカからヘンドン教授をお招きして、シンポジアムを開催した。これが契機となって、文化経済学会(日本)が発足する。その、最初の大会で、お目にかかったのが最初である。

当時は、現役の観光先導者の筆頭で、四国霊場めぐりを観光サービスとして、商品化された、第一人者として著名であった。

先達の服装で、空海とともに歩む、まさに、先駆者のお姿であった。東京都内の大学で講師も務められ、実務と、研究の二本足で、堂々と学会に登場されたのである。

この学会は、学者・研究者だけでなく、実務家の研究者も、加入していただく方針であったので、大歓迎であった。

その後、多くの研究業績を公表されたが、空海を始め、行基、忍性、など、徳の高い僧であるだけでなく、地域を開発する多様な事業を起こし、一人一人の民衆に、仕事や福祉・治療の場を提供した「開拓者」を、研究し、彼らが、歩いた道を、実際に、「ガイド」として「ともに歩む」観光学を、拓かれたのである。

当時、観光学といえば、交通サービス論の延長のように取り扱われていた。これを、根本から書き直す研究を開始されたのである。

いま、コロナ禍によって、観光事業は、衰退しているといわれる。交通の面から言えば、そうであろう。しかし、近藤観光学でいえば、現地には、行けなくても、空海や行基に関係する、文献を読み、彼らが、当時、歩んだ道、仏閣の建立や、公共土木事業や、温泉治療の現場を、文献で、調査して、当時の状況を想像し、地図の上で、彼らの足跡を辿り、かれらの、思想と歩みを、歴史から学習して、楽しむことができる。

このような観光学は、世界初であり、旅行に行けなくとも、出版物や、映像でも、十分に楽しむことができよう。このように考えると、観光事業は、出版事業や、映像事業として、これらを基本としたうえで、交通手段を利用した旅が生きてくるのである。いま、旅に行けないからと言って、成り立たない事業ではない。

近藤先生は、このような視点から、観光事業を、地理学や歴史学などに近く、同時に、開拓者精神という意味では、哲学や経営哲学と、並び立つ学術として、確立しようとされた。

近藤観光学を学ぶ各位は、観光事業の未来をみつめられ、新分野への挑戦をおこなわれることを期待したい。

 

近藤太一先生の代表的な論文

近藤太一(2011)「人と道を拓く文化事業」国際文化政策研究教育学会編『国際文化政策』第2号(2011年12月)

近藤太一(2012)「私塾と官塾による日本地方文化の創出」国際文化政策研究教育学会編『国際文化政策』第3号(2012年9月)

近藤太一(2018)「ふるさと観光文化資本の発見と文脈の解明」国際文化政策研究教育学会編『国際文化政策』第9号(2018年9月)

近藤太一(2019)「厩戸皇子(聖徳太子)の生涯と人物像」国際文化政策研究教育学会編『国際文化政策』第10号(2019年8月)

 

(©Ikegami, Jun 2020)

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