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池上・総合学術データベース:時評欄(43);「テスラCEOの経営ノウハウから学ぶ-所得再分配の新たなシステムを考えるにあたって-」2020年6月1日

二宮尊徳の経営ノウハウを地域ファンド活用に活かした実績

前回、アメリカ合衆国の新たな情報産業集積地、シリコン・バレ-発、『日本経済新聞社』2020年5月29日、夕刊、3ペ-ジは、白石武志記者の通信として、「テスラCEO 報酬750億円」「イ-ロン・マスク氏」の見出しを掲げた。ことをご紹介し、この所得額を日本の地域再生に活かし得たとすれば、画期的な成果が得られるのではないか、という問題を提起した。

このような地域再生事業において、幕末期、二宮尊徳が「仕法」を各地で実行したとき、尊徳は土台金を提供しただけでなくて、彼の持つ、優れた経営ノウハウを活かして地域ファンドを積極的に運用し、10年くらいの単位で精励奇特人に無利子無担保で貸し付け、投資元本を回収しただけでなく、彼らから謝礼として「冥加金」を自発的に納付させた。さらに、新農地の開発や金融分野にも積極的に投資して収益を上げている。これらの冥加金や収益事業によって、所得の再分配を実行した。病人の治療や住まいの改善などの福祉関係経費である。

彼は、自分の資産を地域再生のために「推譲」しただけでなく、彼の持つ、優れた経営ノウハウをも地域ファンド活用のために「推譲」したのである(この視点を解明されたのは、尊徳研究者、中野健一氏である*)。

 

*中野健一(2019)「文明視点による理念型経済圏の形成」国際文化政策研究教育学会編『国際文化政策』第10号(2019年8月)参照。

 

このことは、地域経営を担う地域ファンド活用において、経営責任者が「優れた経営ノウハウ」をもっていること、そして、それを活かすことが重要な課題になっていることを示している。

「推譲」を行う人は、土台金を出すだけでなくて、地域経営の責任者として、彼が身につけた経営ノウハウをも「推譲」すること。これが、地域ファンドを活かせるかどうかの決め手になってくるのである。

そうはいっても、現在の会社組織でCEOとなった人々が直ちに地域経営の責任者となるような雰囲気ではない。そこで、地域ファンド構築を志す市民が力を合わせて、CEOのノウハウを学習し、今後の地域経営を持続的に発展させるための経営ノウハウを学習し研究して試行錯誤しながら身につける以外に道はないのかも知れない。

この経営ノウハウは、尊徳が事業家として、あるいは、商人として、身につけた経営ノウハウを、今度は、「公人」として、地域経営に生かすことになる。

この考え方を、現代日本の地域経営に活かすとすれば、750億円というテスラCEOの所得額だけでなくて、テスラCEOの経営ノウハウを学習して、それを、日本の地域経営に活かす視点が必要である。そして、この場合も、営利事業として、株式会社経営のなかで、テスラCEOが身につけた経営ノウハウを公人としての立場で、地域ファンド活用に、活かすことになろう。

さらに、テスラCEOの経験はアメリカでのものであるから、日本社会に、そのまま通用するわけではないので、一定の配慮や修正も必要である。(Ikegami, Jun ©2020)

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