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池上・総合学術データベース:時評欄(35);「ふるさと創生大学の誕生と発展の基礎づくり」2020年3月4日
ふるさと創生大学の思想基盤
―日本における芸術文化創造と支援の伝統・京都学派の思想・佐藤霊峰の詩
私たち、文化政策・まちづくり大学院大学を通信制で設立し、「文化による地域づくり」さらには、「現代の文化政策=文化をあらゆる公共政策の基礎に位置付けるという考え方」における思想と行動を全世界に普及しようと試みたのは、福原義春、植木浩、池上惇の三名であった。
この三人の専門家としての活動領域は、それぞれに特徴がある。
福原義春は、「文化資本の経営」という経営哲学を提起して、経済界を動かした中心的な存在であったし、植木浩は、芸術文化領域が本格的に、文化行政の対象となった時期の文化庁長官であり、池上惇は、国際文化経済学会の日本での受け皿を整備した、文化経済学の案内人であった。文化経済学という学問は、人間が経済を制御しうるという事実が原点としてあった。そこで、池上が専攻していた、「人間発達の経済学」と重なる点が多かったからである。
いわば、三人は、経営、行政、学術の三領域から、「文化による地域づくりの総合的な教育研究システム構築」に取り組んだのである。かれらを出合わせたのは、日本における文化経済学会の設立であり、1990年代の初頭のことであった。
当時、文化経済学の中心的なテーマは、それまでの経済学が最も苦手としていた、「人間主体における‘文化の創造的発展’が経済に及ぼす影響」とか、「人間が担う、芸術や科学・技術の創造的発展が経済に及ぼす影響」などを、積極的に解明して、人的能力の開発や、地域における職人産業の集積など、それまでの経済学が果たし得なかった課題に挑戦したからである。
これは、ある意味では、経済学の国際的な研究動向を反映したものであり、巨大化する経済システムを前にして、人類は、どうすれば、それを制御しながら生き延びて、永続的に進歩してゆけるのか、という課題にこたえようとしたものと言えるであろう。
このような国際的な動向とともに、ふるさと創生大学を生み出した基盤としては、さらに、二つのものがある。一つは、京都学派、梅棹忠夫の業績であり、もう一つは、東北における佐藤霊峰の遺産であった。(Ikegami, Jun ©2020)