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池上・総合学術データベース:時評欄(24);「社会的な排除を慎み一人一人の人生を尊重しあうには」 2019年12月10日
今回、ご紹介するのは、池上惇の書評である。藤井克徳『障害者をしめ出す社会は弱くもろい』全国障害者問題研究会出版部、2017年。B5版、145ペ-ジ。1500円+税。
藤井克徳先生は、1949年福井県生まれ。青森県立盲学校ご卒業。東京で、都立小平養護学校勤務。在職中、日本初の精神障害者の共同作業所づくりや「共同作業所全国連絡会(現きょうされん)の活動にご参加。
2010年代には内閣府障害者制度改革推進会魏議長代理、同、政策委員長代理を務められ、2012年に、国連ESCAPチャンピオン(障害者の権利擁護推進)賞を受賞された。
2014年には、国連障害者権利条約第7回締結国会議日本政府代表団顧問を務められた。
先生は、共同作業所活動を通じて、障害者が障害の原因、とくに、社会的な支配構造や排除・抑圧の歴史や現実を直視されてきた。
先生の眼は「見えないものを観る」ことができる。
その理由は、障害の原因を科学的に解明して、医学研究と社会研究(障害にとっての社会環境)の両面から、総合的に解明する場を創ってこられたからである。
本書で、指摘されているように、障害研究には、医学モデルと、社会モデルの双方からの解明が必要である。日本社会では、医学モデル優先の風潮があるが、両者の的確なバランスを保つ努力の必要性を強く指摘されている(15-16ペ-ジ)。
医学の研究を専門家とともに深めるとともに、社会の研究をも、市民とともに深めてゆくこと。
そして、先生は、障害を医学研究者や社会研究者、市民、健常者とともに克服する場を創出された。さらには、「人間発達の場としての共同作業所」など、人々が自由に生きる場を生み出して、それらを持続的に発展させ、世界的なネットワ-クを構築される。
この運動を通じて、先生は、日本と世界の地域と社会を変革する道を一貫して追求された。そして、貴重な体験の中から、「運動は裏切らない」ことを身をもって実証されてきたのである(藤井克徳「裏切らない」本書、125ペ-ジ)。(Ikegami, Jun ©2019)