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時評欄(18)池上惇「創造経済への道―恐怖の贈り物MMT(赤字公債の累積を容認する現代貨幣理論)に代わる農業とテレワーク」(2019年8月18日)
れいわ新選組の山本太郎氏は、MMTを容認するかのような論調で世間を驚かす一方で、「消費税の廃止」と20兆円分の税収減少の穴を埋めるには「所得税や法人税を(1989年の)消費税導入前に戻せばよい。大企業や金持ちへの課税強化でおつりがくる。」と主張された(「多事奏論・消費税廃止 山本太郎案から考える」『朝日新聞朝刊2019年8月7日』)。
これは、確かに魅力ある提案である。ここから見る限りは、山本氏のご提案は、累進所得課税システム強化、大企業課税強化への道であり、これらの増税によって、減税分を相殺し、財政の健全化に配慮しているからである。
消費税導入の際には、「広く薄く消費税を取る。その結果、経済的な格差は拡大するが、その代わりに、投資への意欲が高まる」という主張がみられた。さらに、「投資への意欲を高めるには、投資意欲を阻害する企業課税や高額所得者課税を減税する」との主張が納税者の説得に用いられてきたからである。
実は、私も、国税としての一般消費税の導入に反対であった。この税はヨーロッパ諸国では、福祉財源として積極的に導入されたが、アメリカ合衆国では、国税としては導入されなかった。アメリカでは、消費税は地方の財源にすぎず、国の基幹税としては認められなかったのである。もともと、アメリカ合衆国は、「参加なくして納税なし」という納税者主権論でイギリスからの独立を実現した国である。減税活動は社会の支持を得ることが多く、1970年代末には、「納税者の反乱」が大規模に起こっている。その意味では、納税者の権利意識が強く、増税政策は実現しにくい。
しかし、そのアメリカまでが、低金利政策と、国家債務拡大政策に転じてしまい、前回、ご説明したように、不健全な、財政金融システム「日本化」の傾向は世界的に強まっている。
このように危険な状況の中で、日本市民は、生活を防衛するために、いま、何をなすべきなのか。創造経済への道を歩んで、危険な動きを制御する力量を身につけるべきではないのか。今日は、この問題に挑戦してみたい。(池上惇・©Jun Ikegami 2019)