文化政策・まちづくり大学

学長ご挨拶

校長

池上惇
(京都大学名誉教授・福井県立大学名誉教授・京都橘大学名誉教授)

  • 私は京大学派が大好きです。とりわけ、経済学では、戸田海市、自然科学・人文科学社会科学の総合では、梅棹忠夫から多くを学びました。
  • ここから、世界最先端の「文化経営学」という学問を開発し、研究と教育の基本としてきました。この学問は、眼に観えないが、地域や企業などが持つ貴重な財産として、人的能力、情報や知識、芸術や文化を評価します。そして、これらを総合して、「地域や企業の文化力」と呼びます。貨幣財産や実物財産に対して「人財」を主要な財産として位置づけていますね。「人と人が身につけたものを大切にする経営学」です。
  • 「人間本位の経営学」こそ「文化経営学」です。
  • 文化経営学は、「現代の市民が仕事や生活の中で自然に身につけた文化力こそが家族経営・地域経営・企業経営・国家経営などの持続的発展を生み出す」と考えます。
  • 市民の文化力は、普段は、誰も自覚していませんが、東日本大震災のような生命や生活の危機が迫ってきたとき、他人を思いやり、自分の命も大事にする習慣を身につけていたことを自覚します。文化とは、互いを敵として追い落とすのではなく、互いの自由を認め合い、愛をもって接することです。
  • 現代では、互いの自由を認め合い、愛をもって接する場は、震災復興まちづくりの場となっています。ここは、「文化による'まちづくり'」の場となりました。
  • 私は、「文化による'まちづくり'」を深く研究し教育するために、10年前に、文化政策・まちづくり大学院大学設立準備委員会代表者となり、大震災の現場で生きる「文化力を持つ人々から学びつつ研究し、その成果を社会人大学院で教育しようと決心しました。
  • そして、先導試行として、一般社団法人 文化政策・まちづくり大学校を震災の年に設立し、代表理事 を務めています。
  • 東日本大震災の復興支援で、「文化による'まちづくり'」の経験を伝えるために、岩手県遠野市、気仙郡住田町に行き、ここで、農業と商業の専門高校、遠野緑峰高校同窓会を通じて地域連携事業:ホップ和紙、早池峰菜開発に関わり、同窓会特別会員となりました。
  • これまで、京大始め、さまざまな機会に知り合った方々と国際文化政策研究教育学会をつくり、研究成果を年に一回、学会誌を発行して公表しながら、会長を務めています。このほか、多数の学会と関わりましたが、主要なものは、以下の通りです。
  • 日本教育学会会員
  • 日本経済学会会員
  • 日本財政学会顧問
  • 文化経済学会(日本)顧問
  • 文化政策学会(日本)顧問

主な履歴

1933年 大阪市生まれ。大阪府立天王寺高等学校卒業。
1956年京都大学経済学部卒業、同大学院経済学研究科修士課程より博士課程に進む。単位取得退学後、京都大学経済学部助手、助教授、教授、評議員、経済学部長を歴任。定年退職後、福井県立大学、京都橘女子大学において、研究科長、学部長など。定年後、現職

京都大時代に、社会人大学院、現代経済学専攻を新設し社会人大学院教育を推進。日本の高学歴社会化を生かした文化経済学など諸分野の博士学位取得者の増加、学術界の基盤拡充に尽力し、現在も、ボランティアとして、各地の在野知識人、経営者、勤労者などの対面教育研究による学術人育成に取り組む。

瑞宝中綬章(研究教育・2012年春季)受賞。
京都大学博士(経済学)。
専門は、人財=文化資本の研究。教育学と経済学の統合を目指す。
文化経済学、財政学、現代経済学。人間発達の経済学・固有価値論の研究など。
就業支援や障害者共同作業所活動の支援者。
各地、文化経営、文化経済の実態調査を実行。経済・経営学研究科、文化政策学研究科などにおいて、修士、博士人材の育成を行い、100名を超える修士・博士の誕生に寄与した。

教育領域においては、生涯学習・生涯研究の提唱者であり、すべての社会人が生涯学習や生涯研究を通じて、知識人として発達する教育研究システムの提唱・構築を推進する。
現在、各地の生涯学習・研究希望者に、対面研究の場を提供しつつ、高校・大学における就職・進学支援活動を基礎に、大学院教育と、卒業後の起業や就業を視野に入れた総合学術研究教育を行っている。
この中で、「文化政策・まちづくり大学院大学(学校法人)」の設立を目指し、岩手県気仙郡住田町、遠野市、京都市に学舎を確保した。また、準備資金を蓄積しつつ、「多様な職歴と学歴を持つ社会人再教育」の場を拓き、修士・博士学位取得者の画期的な増加を期待している。

開校の言葉

-徳を積み、稼ぐ力量を持つ人財(人こそ貴重な財産)を各地から―

今回、開校する人財・教育総合支援学校=文化政策・まちづくり学校(気仙住田)は、これまでの教育研究活動の集大成であり、「生涯学習人が地域のつながりを尊重し、互いの人格を高めあい、生存競争ではなく、「育ちあい学びあい」の場を提供して、すべての市民に「働きつつ学ぶ権利」を保障するよう努力する。
日本には、徳を積むこと、を通じて、互いの学習意欲を高め、学びあいの中で、育ちあって、自分と相手の潜在能力を引き出し、高い職業的な自立の力量を身につける伝統がある。わが子のためには、教育投資を辞さない崇高な国民性がある。

私たちは、このような父母の'営み'を尊重し、教育費用を課税対象金額から控除する税制を求めてきた(池上惇『減税と地域福祉の論理』三嶺書房)。この道を追求しながら、これから学ぶ高校生や社会人には、無料で再教育を受ける機会をつくりだす決意である。
「ふるさと創生総合学術デ-タベ-ス」は、質の高い、学術情報などの提供によって、社会人再教育の場を提供するとともに、このデ-タベ-ス構築事業に御協賛をいただける、個人や法人からご協賛金をいただき、これらを原資として、デ-タベ-ス事業推進者に学術研究費を生み出し、同時に、授業料無料化の財源とする予定である。

現在、2018年5月に発足する「文化政策・まちづくり学校」においては、授業料を無料とし、経済負担能力のある各位には能力に応じて「総合学術デ-タベ-ス」構築事業に対する協賛金をお願いしたい。
将来、学校法人の文化政策・まちづくり大学院大学が発足した場合、授業料は他の私学同様、各自に、ご負担をお願いするが、一定基準を満たした合格者には、授業料は無料とする
* この基準は実態を研究して変更することも視野に入れる。

無料化の実現には、このデ-タベ-スの質が高く、人生を拓くに足る内容が伴わねばならないが、関係者一同、心して、全力を尽くす覚悟であるので、何卒、本事業に対して、多くの各位のご協賛をお願い申し上げる次第である。

このデ-タベ-ス事業の内容には、「人財(人こそ貴重な財産)」であるとの思想と行動の記録や理論化の試みを奨励し、人財研究こそが新たな創造的学術研究への道であることを示そうと試みた。各位のご理解と御支援を賜れば幸いである。

2017年11月25日 遠野緑峰高校拓心館(同窓会館にて)