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総合学術データベース:時評欄(75)ホ-ムペ-ジ用;綾野浩司「歴史に学ぶことは、緊 急の課題」

「歴史に学ぶことは、緊急の課題」を投稿するにあたって

この間、本論の文章を多くの先輩・同僚・友人たちに見て頂き、様々なご感想やご批判を頂くことができました。

昭和10年生まれの私の父や、昭和8年生まれの義理の母は、ウクライナ諸都市の廃墟の映像に、太平洋戦争の過程で自らが体験した「廃墟の記憶」を重ね合わせ、「戦争の結果は、いつでも、どこでも、同じだ。」との深い感慨をもらしました。

また私と同じく、戦争を直接体験していない友人たちの多くは、「歴史的事実の重たさ」に共感してくれましたが、なかには、この文章で初めて、日本の歩んできた歴史との共通性に気づいたという声も寄せられ、かかる拙い文章にも意義がないわけではないと感じることもできました*。

 

*綾野浩司氏は社会人研究人として市民大学院で学習・研究を実行されてきた。企業では業務を監査するお仕事をされており、日本各地の現場をつぶさに観察され助言を行われてきた。同氏の学術的な御貢献の中でも、「個性を生かしあう場づくり」という、普通の経営学にはない、独自の発想をお持ちで、この視点から経営学や経済学に新たな風を送り込もうとされてきた。この着想には、いつも、驚かされる。現代の経営では、創業者の精神を「共有する」という概念が、よく用いられてきた。これはこれで、重要な視点であると思うけれども、単に、共有するというよりは、個々人が個性を生かしあって、その基盤の上で、協働やハーモニーを生み出すという視点の方が、より深い洞察力を意味するのではあるまいか(池上惇記)。

 

さらに、若い友人たちからは、「このような論評よりも、ウクライナへの現実的支援、例えば、クラウド・ファウンディングといった運動に参加することの方が、緊急の課題ではないか。」といった、極めて現実的かつ建設的なご批判も頂きました。

私は、これら全ての声を受け止めたいと思っています。

私は、以前、当「総合学術データベース」や「国際文化政策第11号」のなかで、「『海を越えて』交響する世界」という論考を発表させて頂きました。

そこでは、19世紀における、ドイツ人「ゲーテ」とスコットランド人「カーライル」の往復書簡を題材に、ドイツとイギリス・スコットランドとの文化交流が、たくさんの仲間たちを巻き込んだ巨大な思想潮流として発展していく過程を、「海を越えるコモン・ストック」の形成として跡づけてみました。

そこでも触れましたが、かかる文化交流が進む一方で、20世紀において、ドイツとイギリスは、二度の世界大戦を戦い、多くの貴重な人命や自然・社会環境を破壊した経験を有することもまた、厳然たる「歴史的な事実」です。

なぜ、「歴史は、何度も繰り返すのか」。

このことをも含めて、池上先生の提唱される「学習社会の創造」を今後とも考えていきたいと  思っています。ご興味のある方は、上記論考もご覧頂けると幸いです。

(©Ayano,Kouji.2021)

 

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