文化政策・まちづくり大学

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時評欄(12)池上惇「ボーイング社:787製造・管理ずさんの疑い」2019年4月23日)

人命軽視の製造・管理システムは何故うまれたのか

2019年4月22日付の『日刊工業新聞』は、9ページの下段、小さな見出しで、「米ボーイング:787製造・管理ずさんの疑い」と報じた。

この記事は、いわゆる「豆記事」で、よほど注意して読まないと見落としてしまう。

よく見ると、ニュ-ヨ-ク・タイムズ電子版、20日の報道であった。

工業新聞の記事は、以下のようである。

「米紙ニュ-ヨ-ク・タイムズ電子版は20日、新型旅客機『737MAX』の墜落事故が相次いだ米航空大手ボーイングが、最新鋭中型旅客機『787』(ドリ-ムライナ-)を製造しているサウスカロライナ州ノ-スチャ-ルストン工場で、安全性を損なう恐れのあるずさんな製造・管理体制の下で生産を加速していたと報じた。」(9ページ)

最近、日本でも、有力自動車メーカーによる「大量リコール」(製品の回収・修繕・賠償・費用負担)が相次いでいる。さらに、免振装置の手抜きや「安全でない」建築物、安心できない金融商品などなど、市民の生命や財産を交通関係製造業や建設・建築事業などが脅かすという異常な事態が多発している。このようなことが起こる原因の解明と応答、調査研究は、人命にかかわることだけに、世界で相次ぐテロ事件と同様に、寸刻を争う。

ボーイングの場合、「ずさんな製造・管理」の原因は、何であったのか。

このような異常な事態と対照的に、国連では、ESG投資(環境・社会問題・企業倫理改善)に取り組み、永続的な発展を実現している企業(SDG‘s)にこそ投資しようとのメッセージが発せられ推進されてきた。このような国際的な潮流から見ると、今や、企業は、利潤を最大化することだけに集中していては、時代から取り残され衰退する運命に直面しているかのようである。企業は、日常的に、環境問題に取り組んで大災害に備え、テロや暴力の口実となっている貧困・格差に応答しつつ、企業統治の力量を高めて、働く人々の個性を開発し学習や研究の力量を高めなければ生き残れない状態に直面している。

これが国連、世界的な視野から研究した結果からの警告である。

このような時代に、アメリカを代表する巨大企業が「ずさんな製造・管理システム」によって顧客の人命を脅かすとは恐ろしいことと言わざるを得ない。

日本では、生命保険業界が、いち早く、ESG投資活動や、SDG‘s 企業をめざす方針を表明してきた。早晩、あらゆる企業の普及してゆくことは間違いがない。

このような世界的潮流の中で、「ずさん」管理に直面する大企業の、今後の応答における動向を研究する。

(池上惇・©Jun Ikegami 2019)

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