文化政策・まちづくり大学

お知らせ

時評欄(8)池上惇「消費税増税に思う-納税者主権=市民主権の意味するものは」2019年4月11日)

2019年3月19日付の日本経済新聞は、「日本の賃金が世界で大きく取り残されている」とし、OECD(経済協力開発機構=主要先進国による‘各国の比較経済統計を正確に作成し公表する’組織)による、残業代を含めた、民間部門(公務員を除く)の年間総収入を時間単価で表すと、2017年と、1997年の間、20年間で、日本は、9%下落し、アメリカ合衆国は、76%増加。ドイツは55%も増加したと報じた。

生活実感から見ると納得しうる数字である。

さらに、この秋には消費税の増税が行われて、故人が自由に活用できる収入部分は、さらに減少する。納税者=市民は何とか耐えてはいるが、耐える力も限界に近付いている。日本の納税者の租税負担能力を考えるとき、これまで、市民が何度も追加消費税負担を拒否し、消費税率をひきあげると政権が交代するほどの反発が広がってきた。

主権在民を規定した、近代的な憲法では、納税者の主権が確立されてきた。その原点は、アメリカの独立革命であり、有名な「政治への参加なくして納税なし=No presentation, no tax」こそ、市民社会のシンボルであった。

私は財政学の研究を始めてから、長い間、この納税者主権論に関心を持ち、議会や市民参加制度を通じて「納税者が政府を制御し、自分たちの税負担を予算において審議し決定する権利がある」という事実に注目してきた。そして、納税者による予算への関心の高い国と低い国があることや、日本の市民は、どちらに属するかについても関心を寄せてきた。今日は、総合学術データベースで、この問題を考えてみたい(池上惇・©Jun Ikegami 2019)。

お知らせ一覧へ戻る