文化政策・まちづくり大学

お知らせ

時評欄(7)池上惇「知的な所有権の保護―農水省、新品種保護へ検討会を設置」2019年3月31日)

2019年3月28日付の朝日新聞朝刊は、「農水省、新品種保護へ検討会」(7ページ)の記事を掲載した。記事によると、イチゴや柑橘類など、日本で新たに開発された農産物の海外流失が検討会設置の背景にあると指摘されている。例えば、国立研究開発法人・農研機構が開発し、2006年に国に登録して、25年間、種苗法によって保護されているはずのブドウ「シャインマスカット」は、苗木が外国に運び出されて国際農産物市場に出回っているらしい。新たに開発された創造的な成果が、創造者の了解を得ずに、外国で生産されるというのは、開発の努力や独創性を無視した、知的な所有権の侵害であるとされる。知的な所有権は、一定の期間、国際条約などで保護されてから、その後は、一般に開放される。いわば、知的な研究開発の成果は、生まれたときは私有財産であるが、一定の期間をすぎれば、その後は、公共財産となって、すべての市民が自由に活用できる。日本の農産物は品質が優秀であるから、知的所有権の持つ経済的価値が注目され始めた。今日は、総合学術データベースで、この問題を考えてみたい(池上惇・©Jun Ikegami 2019)。

お知らせ一覧へ戻る